越境ECをする際に知っておくべき主な規制とは?
越境ECには輸出型と輸入型があり、輸出型は他国へ商品やサービスを販売し、輸入型は他国から商品やサービスを購入します。
いずれの場合も、国・地域ごとにまた商品ごとにいろいろな規制が存在します。
規制の内容はそれぞれ異なりますので、日本と現地の法律をしっかりチェックしなければなりません。
ここでは、越境ECをするときの各種の規制について、知っておくべきポイントを解説します。
この記事を読めば、市場や規制に関する知識が深まりますので、ぜひ参考にしてください。
越境ECとは
越境ECとは国境を越えて行う電子商取引です。
日本の事業者は海外マーケットに、海外の事業者は日本マーケットに、商品やサービスを販売します。
事業者は国内の市場にも世界の市場にも進出できます。
越境ECにおける規制の種類と内容
輸出入関連規制・知的財産権関連規制・消費者保護関連規制等があります。
輸出入関連は、輸出入管理令や外国為替、外国貿易法によるものです。
また、日本で登録した商標や特許は海外では保護されません。
越境ECに関わる法律や規則
資金決済法により資金決済手段に関する規制や、外為法により外国為替や外国貿易に関する規制があります。
また、消費者契約法により消費者と事業者との間の契約に関する規制があります。
規制項目とトラブル
越境ECの規制の項目には、決済・管轄裁判所と準拠法・輸出入規制・税制等のものがあります。
また、越境ECにはさまざまなトラブルが発生する可能性があります。
商品の品質や安全性・配送や返品・支払いや通貨換算等は、あらかじめ販売者の信頼性や評判を確認しましょう。
決済
海外に商品を販売するときは対象国に合わせた最適な方法を選択することが重要です。
越境ECの決済は、クレジットカード・PayPal等の第三者支払いサービス・デビットカード・電子マネー・ネットバンキングや店舗からの振込等によって行われています。
配送
越境ECにおける配送には、輸出国の規制・輸入国の規制・物流サービス提供者の規制があります。
輸出国規制は外国為替及び外国貿易法や関税法等、輸入国規制は税関手続きや検査や検疫等です。
物流サービス提供者の規制は、配送コストや配送時間、配送品質等のものです。
関税
日本では関税は約35%の品目が無税となっています。
個人輸入は課税価格1万円以下なら無関税です。
課税価格20万円以下に特例簡易税率が適用されます。
一部の国や地域は経済連携協定により優遇関税や無関税輸入の場合や、アンチ・ダンピング関税が課せられる場合もあります。
消費税
越境ECを海外から日本へ行うときは商品の輸入時に関税と消費税が課税されます。
海外事業者は特定事業者登録制度に登録が必要です。
個人輸入の場合は一定の金額以下の商品については免税です。
越境ECを日本から海外へ行うときは商品の輸出時に消費税が原則免除です。
個人情報保護
日本の個人情報保護法では、外国に居る第三者に個人データを越境移転するには、本人の同意の取得や国の保護制度の水準、提供先の体制の整備を条件にしています。
また、提供先の外国でもその国の個人情報保護法やその他の関連法令の遵守が必要です。
規制に違反した場合のリスクや対策
規制に違反すると、世界消費者から苦情や訴訟・税関や行政機関から処分や罰金、為替レートや送金手数料等のリスクがあります。
輸入禁止・制限品目を扱うときは現地の法律や規制を遵守しなければなりません。
違反には商品の没収や罰金、訴訟等のリスクがあります。
中国の規制事例と対応策
ここからは、中国の規制事例と対応策について紹介していきます。
中国の越境ECにおける規制の最新情報
2019年の中華人民共和国電子商務法が幅広い内容を規定しています。
国境を超えて商品を購入する際は、消費者に対し品質や安全性等の基準を満たしていることを証明する告知書の提供が必要です。
また、越境ECにおいては中国語の電子ラベルを表示させる必要があります。
国内でウェブサイトを運営する場合は、ICP(Internet Content Provider)登録が必要です。
国外から国内へ商品を郵送する場合は行郵税が課されます。政府が指定した越境ECプラットフォームを利用すると電商総合税という優遇措置が適用されます。
中国の越境ECにおけるポジティブリスト
ポジティブリストは、中国政府が優遇税制や輸入手続きの簡素化対象商品の一覧表で、一般貿易より優遇される電商総合税の対象となります。
輸入時の検査検疫や許認可等の手続きも簡素化されます。1,476品目(2022年2月)あり、対象外でも高い税率の一般貿易税制でなら販売できます。
参照:越境EC輸入商品リスト改定、トマトジュースや家庭用食洗機等29税目を追加(JETRO)
中国向けの越境ECで売ってはいけないもの
法令で禁止されているもの、ポジティブリストに含まれないもの、ポジティブリストに含まれても個人消費用の範疇を超える商品・サービスです。
例えば、梅酒と日本酒は許可されましたが、ビールは禁止されています。
また、福島第一原発事故を受け10都県からの食品の輸入を停止しています。
中国の越境ECに関して商品の販売に免許や申請が必要なもの
商品の種類や数量により免許や申請が必要な場合があります。
例えば、食品や化粧品、医薬品等は中国の検疫や衛生基準に適合していると証明する書類が必要です。また、一定の金額以上の商品を販売するときは税関に申告する必要があります。
中国の越境ECに関してトラブルになった事例
品質・違法広告・アフターサービス・消費者権利の侵害・契約違反・不正競争・違法請求等に関するトラブルがあります。
また、中国輸出禁止品、通関に未認証等の通関トラブル、品物が予定通り届かないとか運送中の紛失等のトラブルがあります。
中国の規制に対応するための秘訣
事業内容や目的に合ったビジネス形態を選択しましょう。
外資企業は中国で、独資、合弁、代表事務所等の形態で進出できます。
自社の商品やサービスに関する規格や検査を満たすようにしましょう。自社の税務や会計に関する規定を遵守しましょう。
事業がどのカテゴリーに属するかを事前に確認し、必要な許可や登録を取得しましょう。
収集したデータはできるだけ中国内で処理し、海外転送は最小限に抑えましょう。中国で事業を行う場合は、自社の知的財産権を十分に登録し、監視し、執行しましょう。
EU諸国の規制事例と対応策
次に、EC諸国の規制事例と対応策について紹介していきます。
EU諸国の越境ECにおける規制の最新情報
**一般データ保護規則(GDPR:General Data Protection Regulation)**はEUの個人情報保護法です。
特定の製品カテゴリーの製品をEU市場に出荷するとCEマーキング表示の必要があります。
**付加価値税(VAT:Value Added Tax)**は各国で税率は異なり一般的に15%から25%です。
2021年7月1日からEU域内に拠点のない事業者がEU域内の消費者に商品を販売する際は、22ユーロ以下でもVATの申告・納税が必要になりました。
150ユーロ以下には事前にVATを徴収しておく**OSS(One stop shop)**が導入されました。
また、化学品、食品、廃棄物、鉄鋼製品等の分野で、改正や新たな規制の導入が行われています。
2024年1月からEU市場で事業を行うと**持続可能性報告指令(CSRD:Corporate Sustainability Reporting Directive)**に基づき、ESG関情報を財務報告と一体化して開示する必要があります。
EU諸国への越境ECで売ってはいけないもの
EUの法律や規則によって販売が許可されていない商品があります。
例えば、特定危険化学品・食品・農水産品・飲料、特殊な野生動植物、薬物・鉄鋼製品・廃棄物等です。
販売すると罰金や刑事処罰等の対象になりますので、事前に必要な許可やライセンスの取得を確認しましょう。
EU諸国の越境ECに関して商品の販売に免許や申請が必要なもの
EUのECでは一部の商品に免許や申請が必要となります。
例えば、医薬品や医療機器は欧州医薬品庁や各国の規制当局の承認を得る必要があります。
また、食品や化粧品は、欧州食品安全機関や各国の当局に通知や登録を行う必要があります。
EU諸国の越境ECに関してトラブルになった事例
不正な広告の禁止等の広告に関する規制違反、価格や名称・連絡先等の消費者への情報提供義務に関する表示規制違反、注文確認メールの送信義務・注文前における入力情報の訂正手段の提供•契約の確認書の提供義務等の販売者の義務違反等によるトラブルがあります。
EU諸国の規制に対応するための秘訣
EU諸国ではさまざまな分野で厳しい規制が存在しますので、最新の情報をEUの公式サイトや各国の政府サイト等でチェックしましょう。
EU諸国の規制は複雑多岐にわたるため専門家やコンサルタントに相談しましょう。EU諸国の規制に準拠していることを明確にアピールしましょう。
米国の規制事例と対応策
次に、米国の規制事例と対応策について紹介していきます。
米国の越境ECにおける規制の最新情報
商品の価格に応じて関税や消費税が課せられます。
関税は商品の種類や原産国によって異なり、一般的に2.5%から25%程度です。
消費税は州ごとに異なりますが平均8%程度です。2018年から州外のオンライン販売者も州内の消費者に対し税徴収義務が生じる場合があります。
食品や化粧品等の越境EC販売には、FDA(Food and DrugAdministration)のルールを守る必要があります。
違反すると、製品の差し止めや没収、罰金や刑事訴追等を受けることがあります。関税や消費税、配送や返品対応、デジタル課税や模造品対策等の規制もあります。
米国の越境ECに関して売ってはいけないもの
米国の法律や規則で販売不許可のものは、例えば火薬類、ガス類、弾薬、武器、象牙等です。
ワシントン条約で定められたものは、例えば絶滅危惧種の動植物やそれらを加工した商品等です。
ほかに、マーケットプレイス規定商品、知的財産権を侵害する物品等があります。
米国の越境ECに関して商品の販売に免許や申請が必要なもの
食品、飲料、化粧品、医薬品、医療機器、放射線放出装置などは、FDA(Food and Drug Administration)の認証手続きが必要です。
また、鉄鋼・アルミニウム製品、繊維製品、タバコ製品等には輸入数量割当制や追加関税があり、事前に登録や許可の申請が必要です。
米国の越境ECに関してトラブルになった事例
決済システムの不正利用や返金トラブル、通関トラブル、税率大幅変更等があります。
また、配送・サービスの提供が遅れた、商品が届かなかった、違う商品が配送された、商品が不良品・偽物であった、サービスの提供が受けられなかった等のトラブルもあります。
参照先: 経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果公表について(概要)」
米国の規制に対応するための秘訣
2018年から中国製品に対する追加関税を段階的に発動し、中国から米国への輸出品は最大25%の関税となりました。
自社の商品が対象になっていないか確認し、価格や供給元を見直す必要があります。米国では連邦法よりも州法の方が厳格な場合が多いです。
販売税や関税の適用範囲や計算方法を事前に調べておきましょう。国内での配送や返品の方法や費用を明確に表示しましょう。
米国の消費者保護法やプライバシー法に準拠しましょう。
まとめ
越境ECについて、市場規模や動向、事例や成功要因、規制の種類と内容、法律や規則、企業への規制、規制項目とトラブル、リスクや対策等を解説しました。
関係の深い中国、EU諸国、米国については、市場の特徴とニーズ、規制事例と対応策、最新情報、規制に対応するための→ヒント等にも触れました。
越境ECは大きなビジネスチャンスですが、多くのリスクや課題も存在します。事前に十分な情報収集や対策を行うため、ぜひこの記事を参考にしてください。