事業の海外進出に必須!越境ECサイトの構築と運用にかかるコストを解説

越境ECサイトとは、国境を越えた電子商取引(EC)を行う、海外の顧客に商品を販売するためのWebサイトです。
越境ECサイトの運営には、国・地域ごとの法律や税制、為替レート、配送手続きなど、クリアしなければならない障壁が複数あるほか、言語や文化の違いも考慮してWebサイトを立ち上げなければなりません。
また、越境ECサイトの運営には、Webサイトの制作や運営にかかる費用、マーケティング費用、ローカライズ(現地化)にかかる費用など、多くのコストがかかります。
この記事では、越境ECにどのようなコストがあるのか、詳しく解説していきます。
ECサイトを構築する方法
まずは越境ECサイトの立ち上げにかかる費用を見ていきましょう。
越境ECサイトの構築には、以下のような方法があります。
- 自社で構築する
- 越境ECサイトの構築代行サービスを利用する
- 海外のECサイトに出店する
自社で構築する
オープンソースなどを利用して自社で開発する場合、Webサイトの制作や運営にかかる費用を抑えることができます。
公開されているECプラットフォームやCMSを利用し、ショッピングカートや決済システムを構築することで、販売にかかるコストを抑えることができます。
ただし、オープンソースを利用する場合でも、ローカライズやマーケティングなど、海外進出にかかるコストは避けられません。
ECプラットフォームには様々な種類がありますが、中でも代表的なものとして、以下の3つが挙げられます。
- Shopify
- WooCommerce
- Magento
Shopify
サイトURL:Shopify 公式サイト
Shopifyは、プログラミング等に詳しくない初心者でも直感的に操作してECサイトを構築することができるプラットフォームです。
テンプレートやプラグインが充実しているため、カスタマイズも容易に行うことができます。
また、日本語にも対応しており、日本国内でも利用者が増えています。
ShopifyにはBasic Shopify、Shopify、Advanced Shopifyの3つのプランがあり、月額29ドルから299ドルまでの利用料がかかります。
また、プランによって手数料が異なり、販売商品によっては手数料もかかることに注意が必要です。
WooCommerce
サイトURL:WooCommerce Wordpressページ
WooCommerceは、WordPressにプラグインを追加することで、ECサイトの構築が可能なプラットフォームです。
WooCommerceを利用する場合、ECサイトの構築に関する費用は無料ですが、ほかの構築方法と同様に運用におけるローカライズやマーケティングなど、海外進出にかかるコストは避けて通れません。
Adobe Commerce
サイトURL:Adobe Commerce 公式サイト
Adobe Commerceは、大規模なECサイトの構築に適したプラットフォームであり、高度な機能が魅力です。
また多言語・多通貨に対応しており、国際展開に向けたECサイトに適している点、豊富なテンプレートやプラグインがあり、カスタマイズ性が高い点も強みになっています。
ただし、初心者にはやや敷居が高いため、使いこなすには専門的な知識を持つ人材が必要になります。
自社で越境ECサイトを立ち上げ、ビジネス展開する場合の費用ですが、以下のようなコストイメージを把握しておくと良いでしょう。
- 初期費用: 200万円から300万円程度
- 開発費用: 月額50万円から100万円程度
- マーケティング費用: 広告費やプロモーション費用など月額数十万円以上
- ローカライズ費用: ECサイトの翻訳や、地域に合わせたコンテンツの提供コスト
- 運用費用: サーバー代や保守費用、カスタマーサポート費用
越境ECサイトの構築代行サービスを利用する
越境ECサイト構築専門の代行サービスを利用することで、越境ECの構築が可能です。
以下、代表的な会社をいくつか紹介します。
expander
サイトURL:expander 公式サイト
expanderは、グローバルなサプライチェーンの構築を得意とする会社で、越境ECサイトの制作から運用までを手掛ける代行サービスを提供しています。
Zai
サイトURL:Zai 公式サイト
Zaiは、Webサイトの制作や運用、マーケティング支援、ローカライズなど、越境ECサイトに必要な全てのサービスを提供しています。
Fulfillment.com
サイトURL: Fulfillment.com 公式サイト
Fulfillment.comは、越境ECサイトの制作から、商品の受発注、配送、カスタマーサポートまでを一括して代行する、フルサポートの越境ECサイト構築代行サービスを提供している企業です。
他社に依頼する場合の注意点
フルスクラッチで他社に依頼する場合、Webサイトの制作や運営に加え、ローカライズやマーケティングなど、海外進出にかかるすべての費用がかかります。
一般的に、フルスクラッチで他社に依頼する場合の費用は、オープンソースを利用する場合に比べて高額になる傾向があり、依頼する業者やプロジェクトの規模によって異なりますが、数百万円から数千万円以上が相場となっています。
こうした構築代行サービスの利用によって、越境ECサイトの構築や運営にかかる費用や労力を抑えられるだけでなく、専門的な知識や経験を持つ代行業者に依頼することで、高品質で成功率の高い越境ECサイトを構築することができる点は大きなメリットになります。
ただし、代行業者によっては、自社のビジネスモデルに合わないケースや、契約条件等、将来的なトラブルの可能性があることにも注意が必要です。
海外のECサイトに出店する
専用の越境ECを構築せずに、海外のECサイトに直接出店する方法もあります。
ここでは、代表的な3つの越境EC向けのサイトを紹介していきます。
- Amazon
- eBay
- Alibaba
Amazon
サイトURL:Amazon 公式サイト
世界中で利用されているECサイトです。各国の言語に対応しており、日本語でも利用することができます。
Amazonへの出店には、以下のような費用がかかります。
- Amazonの出品料:出品する商品の種類や数量、価格帯によって異なります。例えば、アパレルカテゴリーの場合、出品料は1品目あたり39円から、10,000品目以上出品する場合は1品目あたり1円です。
- 成功報酬料:販売が成立した場合に、販売価格に対して課せられる手数料です。商品のカテゴリーや価格帯によって異なります。例えば、食品・飲料カテゴリーの場合、販売価格の8%が手数料です。
- 配送手数料:商品の配送に関する費用です。Amazonが提供する配送サービスを利用する場合はAmazonへ、他社の配送サービスを利用する場合は、そちらの会社に支払いを行います。
- 返品・交換に関する費用:販売した商品が返品・交換された場合にかかる費用です。Amazonが提供する返品・交換サービスを利用する場合は、Amazonにコストを支払います。商品のカテゴリーや価格帯によって、返品・交換に関するルールが異なる点が特徴的です。
- 広告費用:Amazonの広告サービスを利用する場合にかかる費用です。商品のカテゴリーや競合状況によって支払い額が変わってきます。
eBay
サイトURL:eBay 公式サイト
eBayは、世界中で利用されているオークションサイトです。
各国の言語に対応しており、日本語での利用ももちろん可能です。
eBayへの出店には、以下のように出品手数料、販売手数料、PayPal手数料、配送費用、返品に伴う費用、広告費用などがかかります。
- 出品手数料: 出品する商品の種類や数量、価格帯によって異なります。例えば、アパレルカテゴリーの場合、出品料は1品目あたり39円から、10,000品目以上出品する場合は1品目あたり1円です。
- 販売手数料:販売が成立した場合に、販売価格に対して課せられる手数料です。商品のカテゴリーや価格帯によって異なりますが、例えば食品・飲料カテゴリーの場合、販売価格の8%が手数料として引かれます。
- PayPal手数料:PayPalを利用する場合にかかる手数料です。国内の場合は、販売価格の3.6%+40円、海外の場合は4.4%+40円が手数料です。
- 配送費用:商品の配送に関する費用です。eBayが提供する配送サービス、もしくは自社で利用する配送業者に対し支払いが発生します。
- 返品・交換に関する費用:販売した商品が返品・交換された場合にかかる費用です。
- 広告費用:eBayの広告サービスを利用する場合にかかる費用です。商品のカテゴリーや競合状況によって異なります。
Alibaba
サイトURL:Alibaba 公式サイト
Alibabaは、中国のECサイトで、中国市場に進出するための有力な手段のひとつです。
また、世界中の企業が商品を出品しており、海外市場に進出するための窓口としても利用することができます。
Alibabaへの出店には以下の費用がかかります。
- 出店費用:出店するための手数料です。出店費用は1年ごとに支払う必要があり、費用は店舗の規模やカテゴリーによって異なります。例えば、小売店の場合、出店費用は2,888元(約47,000円)からです。
- ストア運営費用:商品の出品や在庫管理、注文処理など、ストアの運営にかかる費用です。費用はストアの規模やカテゴリーによって異なりますが、例えば、小売店の場合、1商品あたり年間100元(約1,600円)がかかります。
- 広告費用:広告掲載やプロモーション活動にかかる費用です。広告費用は、広告の種類や掲載期間、広告の効果によって異なります。
- 決済手数料:Alibabaが提供する決済サービスを利用する場合にかかる手数料です。費用は決済方法や金額によって異なります。
- 配送費用:商品の配送に関する費用です。海外配送になる場合は、輸入税や関税などがかかる場合があるため、注意が必要です。
越境ECサイトの運用コスト
ここまで越境ECサイトの構築コストや出店コストについてお話してきましたが、以下では、ECサイトの運用コストを見ていきます。
越境ECサイトを構築し物販を開始した場合、以下のような運用コストがかかります。
- Webサイトの保守・運営費用
- カスタマーサポートコスト
- TMS(貨物輸送管理)コスト
- 支払い手数料
- 地域ごとの税金・関税
- ローカライズ(現地化)コスト
- マーケティング費用
それぞれ詳細をみていきましょう。
Webサイトの保守・運営費
Webサイトのホスティング、セキュリティ、バックアップ、データベース管理、アップデート、SEO対策などのコストです。
Webサイトの規模や機能によって異なりますが、月額数千円から数十万円程度が相場です。
カスタマーサポートコスト
商品の問い合わせやクレーム対応など、カスタマーサポートにかかるコストです。
雇用するスタッフの人数や外部の業者に委託する場合などによって費用が異なります。
TMS(貨物輸送管理)コスト
商品の配送に関するコストです。
TMSは、貨物輸送管理システムで、配送先や輸送手段、配送期間などを管理するためのシステムです。
ECサイト専用のシステムを導入する方法や、ECプラットフォームが提供するTMSを利用する方法があります。
支払い手数料
クレジットカードやPayPalなどの決済システムを利用した場合のコストです。
こうした手数料は、決済手段や利用回数などによって異なります。
地域ごとの税金・関税
越境ECサイトで商品を販売する場合、輸出国や輸入国の税金や関税がかかることがあります。また、消費税や付加価値税など地域ごとに異なる税金がかかることもあるため、ECサイト開設前に調べておく必要があるでしょう。
ローカライズ(現地化)コスト
言語や文化の違いに準拠するためのコストです。
ローカライズには、Webサイトの翻訳や、地域に合わせた商品の企画・開発、地域の法律や文化に沿ったマーケティングなどが含まれます。
マーケティング費用
広告費、プロモーション費、SEO対策費、SNS運用費などを含むコストです。マーケティングの方法や範囲、対象地域によって異なります。
まとめ
ここまで越境ECにかかわるコストについて紹介してきました。
ECサイトの立ち上げから、店舗の開店、運用までさまざまなコストがかかり、初期投資や店舗運営のための運転資金も欠かせません。
日本でECサイトを立ち上げる以上の苦労が伴う可能性はありますが、海外進出によってより多くのチャンスを獲得できる可能性もあります。
計画的なコスト管理と実行計画を進めていきましょう。