資生堂のオムニチャネル成功事例から学ぶEC戦略とは
コロナ禍以降、顧客がネットで検索をかけて様々な情報を得て、買い物をする傾向が急増しています。そのためEC戦略を強化する企業も増えています。
資生堂では、デジタル・IT関連業務を提供する合弁会社「資生堂インタラクティブビューティー」を立ち上げることで新たな取り組みを始めました。
これからの時代の販売を考える際に、資生堂のオムニチャネル化の事例を見ていくと、非常に参考になります。
この記事を読めば、実店舗とECの効果的な活用法、オムニチャネルの手法について知ることができます。
店舗とEC戦略を連携させることが、これからの売上アップにつながっていきますので、ぜひ参考にしてください。
資生堂の事例「資生堂インタラクティブビューティー」での新しい取り組み
資生堂では、デジタル・IT関連業務を提供する合弁会社「資生堂インタラクティブビューティー」を創設しています。
サイトURL:資生堂インタラクティブビューティー株式会社 公式サイト
資生堂インタラクティブビューティーは、顧客一人一人に最適な価値を提供するために、顧客情報、購買動向、肌状態などの様々な情報を個別にデータ化するための会社です。
データ化を進めることで、それぞれの顧客に応じた美容体験を提案可能にしています。
顧客が事前に商品検索をする段階から商品体験までをイメージし、購入時だけではなく購入前後の体験全体を意識した施策を重視しているのが特徴です。
資生堂の「顧客の購入前後の体験を重視した戦略」
その一つとして、ECサイトでのライブコマースも顧客の体験価値を高めるための戦略となっています。
商品の購入前に、テスターを使ったメイクテクニック映像を見せ、自分が疑似体験しているように感じられる工夫をしています。
また、顧客分析データをもとに、AIを活用した自動送信メールの配信を行っています。
例えば、ある顧客がA商品を購入した場合、その後もその商品の案内を一律に継続し続けるだけでなく、様々な分析が行われています。
AIを駆使することで、ユーザーのアクセス状況やサイト内の行動を分析した上で、それぞれの顧客データに基づいた、ニーズに合ったコンテンツをメールで配信するように工夫しています。
自社の一つの商品を購入した顧客が、次にどのような動きをしているのかも捉えながら、その後の体験も重要視した戦略が取られていると言えるでしょう。
資生堂の「オムニチャネル・カスタマーエクスペリエンス」の考え方とは
資生堂は、「オムニチャネル・カスタマーエクスペリエンス」も大切にしています。
ECに力を入れながらも、それだけでは完結しないコミュニケーション体験も重要視しています。
コロナ禍以降、実店舗での購入ができないことが増えましたが、ECサイトで購入したときの感動、五感を使った買い物体験を求める人が増加傾向となりました。
ECサイトで単に商品を購入するだけでなく、それプラスの体験ができることが求められていることを資生堂では重要視しています。
総合美容サイト「ワタシプラス」の限定アドベントカレンダー
サイトURL:ワタシプラス 公式サイト
例えば、資生堂の総合美容サイト「ワタシプラス」では、一定金額以上の購入で、限定アドベントカレンダーをプレゼントしています。
カレンダーには、2021年12月1日~25日の日付のついた箱が入っており、箱に入ったサンプルを1日ずつ試せるものです。
どんなサンプルが入っているのかわくわくしながら毎日空ける楽しさを体験してもらい、様々なブランドを試してもらうことで購入につなげる仕組みを作りました。
この限定プレゼントは、わくわくする体験をしてもらいながら、購入に繋げる良い事例と言えるでしょう。
資生堂の事例「Global Flagship Store」の展開
資生堂ジャパンでは、ECやデジタルでの体験価値と実店舗でのリアルな体験を融合する戦略も行っています。
リアルとバーチャルを融合した店舗施設が銀座にある新しい施設「Global Flagship Store」です。
サイトURL:Global Flagship Store ページ(資生堂)
最新のテクノロジーと五感に働きかけるヒューマンタッチな体験を融合させた、美の体験を提供している場です。
資生堂では、この施設で、新しい体験の提供を目的としていますが、実際に20代に「化粧品カウンターを訪れる理由」を調査した結果は次のようなものでした。
- モノだけでなく購入体験も重要なポイント
- 自分にぴったりなアドバイスをくれる
- トライアルの機会が提供されている
若い世代も、店舗での購入体験や店員とのコミュニケーションを重要視していることがわかります。
そして、リアルな購入体験とバーチャルを融合した店舗「Global Flagship Store」では、具体的に次のような設備を導入して成功しています。
五感を使って化粧品を試せるデジタルテスター
店頭の前面に、デジタルテスターを設置し、2メートル以内に人が近づくと画面が変化していきます。
そして、さらに商品を手に取ると、デジタルコンテンツで特長や使用方法などの情報が現れる仕組みとなっていて画期的です。
消費者ニーズに合わせた美容カウンセリング
パーソナルで深くカウンセリングをしてくれる「デジタルカウンセリングミラー」も設置され、鏡をタッチパネルで操作すると、商品や使用方法、肌測定の情報が出ます。
さらに、スマートフォンでQRコードを読み取ると、カウンセリングのデータを自宅で確認できます。
より視覚的に分かり、一人ひとりに合わせたカウンセリングを可能にした国内化粧品業界初のシステムとなっています。
日本初導入の先端メディテーション(瞑想)体験
日本初導入のメディテーションカプセル「SOMADOME(ソマドーム)」を地下1階に設置しています。
カプセルに入ると、五感(音、光、香り、温感)にアプローチして、リラックスすることが可能です。
人の耳では聴こえないようなバイノーラルビートで瞑想状態へ導き、光が変化する空間となり、リラックスできます。
SHISEIDOブランドの美容液「アルティミューン」の香りも楽しめる仕組みです。
資生堂の新しい施設「Global Flagship Store」は、購入体験だけではなく、個々に応じたカウンセリングがさらに深く行われ、リラックスできるスペースもあるなど、様々な体験ができるように工夫されている施設です。
まさに、デジタル、バーチャルと人による丁寧なカウンセリングが融合している新しい施設と言えるでしょう。
資生堂の事例の一つ、ECでのパーソナルカウンセリング体験
また、資生堂では自宅で「SHISEIDOビューティーコンサルタント」によるカウンセリングが体験できるコンテンツも作っています。
例えば、ビューティーコンサルタントが店頭と同じようにオンラインでパーソナルカウンセリングを行ってくれる体験です。
現在では、数名のビューティーコンサルタントがデジタルオンライン上での活動をメインにしています。
これも、ECやデジタルでの体験価値と実店舗でのリアルな体験の融合の一つの方法、オム二チャネルの成功例です。最近ではこうしたスタイルも増えてきています。
まとめ
資生堂のオムニチャネルの成功事例について紹介しました。
顧客は購入をするだけでなく、資生堂が20代の顧客を調査した結果、次のような体験も求めています。
- モノだけでなく購入体験も重要なポイント
- 自分にぴったりなアドバイスをくれる
- トライアルの機会が提供されている
こうした体験をECやデジタル、そして実店舗で、それぞれの良さを融合しながらオムニチャネルで行うことで顧客の満足を高められるでしょう。
また、次のような顧客体験がこれからの時代には重要となります。
- 五感を使った体験
- 個々のニーズに深く合わせてくれること
- 購入後も継続した体験の提供
資生堂のオムニチャネルの成功事例から学び、これらの体験を重要視していくことで、大きな成功を生み出してみてはいかがでしょうか。