アシックスとオムニチャネル 新時代のマーケティング戦略を解析
アシックスは、伝統的なスポーツブランドとしての地位を保ちながら、デジタル時代の新しい戦略を採用しています。
特にオムニチャネルというアプローチを中心に、ブランドの成長と顧客体験を向上させました。
この記事では、アシックスのオムニチャネル戦略の核心を探り、成功の秘訣を紐解きます。
アシックスのオムニチャネル戦略の背景
アシックスは競合他社や新型コロナウイルスの影響で売上が減少する中、デジタル転換を進め、オムニチャネルという販売戦略に取り組みました。
オムニチャネルは店舗やECサイトなど、さまざまなチャネルを統合して顧客に提供します。
アシックスはオムニチャネルへの取り組みによって、顧客との関係を強化し、製品やサービスの価値を高めました。
その結果、売上の向上につながったのです。
アシックスのビジネス状況
アシックスは1949年に創業した歴史ある企業で、ランニングシューズやウェアなどの高品質な製品で世界的な知名度を誇ります。
しかし、近年はナイキやアディダスなどの海外勢や、ユニクロや無印良品などのファストファッションブランドとの競争が激化しています。
また、新型コロナウイルスの感染拡大により、店舗の営業が制限されたりイベントが中止されたりするなど、販売環境が悪化しました。
実際に2020年度の売上は前年と比べて20%ほど低下しました。
デジタル転換の必要性
アシックスは、コロナ禍で顧客が店舗に来店しないという危機的な状況に対応するために、デジタル転換を加速させることを決めました。
デジタル転換とは、ITやAIなどの技術を活用して、ビジネスや組織を変革することです。
アシックスは、デジタル転換を通して、以下のような目的を達成しようとしています。
- 顧客との関係を強化する
- 製品やサービスの価値を高める
- コストや時間を削減する
- 新しい市場や顧客層を開拓する
オムニチャネルへの取り組みの開始
アシックスは、デジタル転換の一環として、オムニチャネルへの取り組みを開始しました。
オムニチャネルとは、店舗やECサイトなど、さまざまな販売チャネルを統合して顧客に提供することです。
店舗では実際に商品を試着でき、ECサイトでは商品のレビューをとおして商品のイメージがわかるため、顧客は自分の好きなチャネルで商品を購入できます。
アシックスのデジタル戦略とその取り組み
アシックスは売上が減少する中、デジタル化の促進や顧客との関係強化によって製品やサービスの価値を高めました。
その代表的なサービスとして、OneASICSとASICS Runkeeperが挙げられます。
これらのサービスは、顧客のニーズや行動を把握するのに役立ちました。
また、新しいデータ基盤の導入によるデータ収集・分析・活用や、サプライチェーンの最適化によるコストや時間の削減に成功しています。
OneASICSとASICS Runkeeperの紹介
OneASICSは、アシックスの会員制プログラムで、ECサイトや店舗での割引やポイント、オンラインでのフィッティングやコーチングなどの特典が受けられます。
参照サイト:OneASICSのページ(ASICS 公式サイト)
ASICS Runkeeperは、ランニングやウォーキングなどの運動を記録・管理できるアプリで、自分の目標や進捗の確認、他ユーザーとのコミュニケーションができます。
参照サイト:ASICS Runkeeper 公式サイト
アシックスはこれらのサービスを通じて、顧客のニーズや行動を把握し、最適な商品や情報の提供に活用しました。
新データ基盤の導入とその効果
アシックスはデータを収集・分析・活用するための新しいデータ基盤の導入によって、サービスの価値を高めました。
また、店舗やECサイトなどから得られるデータを一元管理し、AIや機械学習などの技術で分析することで、製品開発や在庫管理における精度や効率の向上、顧客へのパーソナライズドなマーケティングやコミュニケーションの実現、顧客満足度やロイヤリティの向上を実現しました。
サプライチェーンの最適化
原材料から製品ができるまでの流れであるサプライチェーンには、原材料費や輸送費がかかります。
アシックスはコストや時間を削減するために、サプライチェーンを最適化しました。
最適化の方法は以下のとおりです。
- 生産拠点や物流拠点を見直し、地域に応じた需要に対応できるようにした
- デジタル技術を活用して、生産計画や在庫管理を柔軟に調整した
- サプライヤーやパートナーと協力して、品質や安全性を確保した
オムニチャネルの事例としてのアシックスの成功要因
アシックスは、顧客体験の重視、データ活用の進化、組織の変革と経営の支持によってオムニチャネルを成功させました。
また、高品質な製品、スポーツに関する知識や情報、サステナビリティへの配慮などで、他ブランドとの差別化を図ったのです。
顧客体験の重視
アシックスが顧客体験を重視したものとして、先ほど取り上げたOneASICSやASICS Runkeeperといったサービスがあります。
これらのサービスを通じて、アシックスは顧客との関係を強化してきました。
さらに、ECサイトや実店舗での特典の提供、オンラインでの付加価値の提供、そして顧客からのフィードバックへの迅速な対応を行い、顧客体験の質を向上させています。
データ活用の進化
データの活用に関しても、アシックスは進んでいます。新しいデータ基盤の導入や、AIや機械学習といった先進技術を活用してデータを解析することで、より深い気づきを得ています。
こうした気づきで得られたものから、製品開発やマーケティング、そして顧客へのパーソナライズドな提案の形で具現化されています。
組織の変革と経営層のリーダーシップ
アシックスはデジタル部門やオムニチャネル部門の設立を通じて、その専門性や実行速度を上げてきました。
また、経営層がデジタル化の重要性を強く意識し、そのビジョンを社内に共有し、必要な予算や人材を確保することで変革を推進しました。
他ブランドとの差別化
他ブランドとの差別化という点においても、アシックスは独自のアプローチをかけています。
高品質な製品や独自の技術を提供し、顧客の信頼を得たのです。
また、スポーツに関する深い知識や情報を顧客に提供することで、ライフスタイル全体をサポートしています。
サステナビリティへの取り組みやグローバルな視点での事業展開も、他ブランドとの差別化を図る要素です。
まとめ
オムニチャネルというデジタル戦略を用いてブランドの成長を促進したアシックスについて、マーケティング戦略を解説しました。
まとめると以下のとおりです。
- コロナ禍で顧客の足が遠のく中、デジタル転換をとおして顧客との関係強化やサービス価値の向上を成功させた
- 店舗やECサイトなど、さまざまな販売チャネルを活用するオムニチャネル戦略を活用した
- OneASICSとASICS Runkeeperという2つのサービスを提供して、顧客ニーズや行動を把握した
- 生産・物流拠点の見直しや生産計画・在庫管理のデータ化によってサプライチェーンを最適化させた
- スポーツに関する知識の提供やサステナビリティへの取り組みによって、競合他社との差別化を図った
アシックスは時代の流れに合わせて、ビジネスモデルを変革することによって進化しています。
こうしたアシックスの事例を参考に、自社のオムニチャネル化に役立ててください。